昭和初め、三浦千代治とハルが秋田県から芽室町に移住し豆腐店を始めたのが創業で、その後、店舗の移転に伴い自転車店へ事業シフト。2代目三浦佐市が家業を継ぎ「町の未来を創りたい」との思いを胸に「三浦商店」が誕生しました。
時は高度経済成長期に突入し、三浦商店も地域に根ざし安定した経営をしていた1964年(昭和39年)、3月22日未明に芽室町中心市街地を焼き尽くした大規模火災「芽室大火」が発生します。市街地は一晩で焼き野原と化し、多くの建物が全焼、たくさんの被災者を出しましたが、商店街の多くは廃業する事なく再建しました。2代目三浦社長も「こんな時こそ地元に貢献したい」と決意を新たに事業展開を図り家具販売を始めます。
その後、家具仕入れ担当として勤務していた洋光が三浦眞知子と結婚して三浦姓を継ぎ、3代目三浦洋光として先代より継承した事業の家具販売と自転車修理販売に加えて、金物や金具の販売、合鍵制作、スピードスケート研ぎなど、地域の要望ひとつひとつに丁寧に応じ「時代」と「暮らし」に合せたさまざまな商品を販売、灯油配送などのサービスを展開しました。現在も4代目三浦啓太郎の共同代表として、三浦商店に頼めば出来ないことはない、地域の要望に必ず応える経営スタイルで手腕を発揮しています。
十勝は、新鮮で美味しい食材の宝庫。4代目三浦社長は、町民が地元食材を美味しく食べれられる場所を作りたいと、Mélanger Labo.【メランジェラボ】をオープンしました。メランジェはフランス語で「混ぜる、混合する」という意味。Mélanger Labo.は十勝の「こだわり」が混ざり合う場所、生産者がこだわりぬいて育てた食材に秘められた、無限の可能性から最適な組み合わせを見つけ出して商品化する、テイクアウト専門のコラボレーションスイーツ研究所です。
看板商品はカルム(calme'n)杉本シェフ監修、考案のフィナンシェドーナッツ。通常アーモンドパウダーを材料として使うのですが、メムロピーナッツ株式会社のメムロピーナッツパウダーを使用しています。
また、鈴鹿農園のさつまいも(芽室金時)を低温でじーっくりと焼き上げ、その上にバニラアイス、メムピーをトッピングした贅沢スイーツ「焼き芋アイス」や、白川農場さんの旬の栗大将カボチャをたっぷり使った「カボチャドーナツ」など、こだわり食材を使ったスイーツを期間限定で販売。今後も様々な旬やこだわり食材をつかったコラボスイーツを企画・展開していきます。
他にも、こどもの日数日間限定でホワイトチョコドーナッツが「鯉のぼりバージョン」なったり、母の日にはストロベリーチョコレートドーナツにカーネーションをあしらった「母の日ドーナツ」が登場。スタッフが日頃の感謝を込めて[THANK YOU]を一筆入魂するという、嬉しい心遣いも満載です。
こだわりが混ざり合って1つのスイーツが出来上がる、Mélanger Labo.は、今ここでしか食べれない味を作り続けます。
4代目三浦社長はドローン操縦のJUIDA無人航空機操縦技能、JUIDA無人航空機安全運行管理者ならびにドローン製造の大手「DJI」の民間資格「DJIスペシャリスト」を保有しており、三浦商店の事業で空撮映像の撮影・編集やフォトグラファーとして活躍していました。事業展開を図るタイミングで「十勝からドローンレースチームを輩出したい」というかねてからの夢の足がかりとなる、ドローンスクール「MDW(ミウラドローンワークス)」を開校。
無人航空機操縦技能証明証、無人航空機安全運航管理者証明証撮影技能が取得できる基本コースから、農家さんのための農薬散布コース、上級者向けの撮影技能やレースドローン技能コースを備えています。
やがて事業が注目されるようになり空撮映像や写真以外に、道から山中の視察依頼や、ドローンを使った狩猟「ドローンハンティング」の依頼が来るようになります。
ドローンハンティングとは、赤外線カメラを搭載したドローンで事前に野生動物を捉えて居場所を特定し、ハンターへ安全かつ最短ルートを提案、危険を回避しながら居場所まで誘導するハンティングスタイルです。あくまで援護とはゆえ「ドローンを使えば誰でも獲れる」という誤った理解が、銃規制がある日本の中で狩猟のハードルを下げてしまうことにならないか、危惧があった事は事実で、なかなか踏み込めずにいました。
しかし、カルム(calme'n)杉本シェフとの交流の中で、ある現実を知りドローンハンティングを請け負う方向へ舵を切ります。杉本シェフは有名レストラン出身の一流シェフでありながらもシカをさばく技術ももつと言い、どうすれば美味しい状態で提供できるのか、狩猟後の処理から皿に盛られるまでの過程を知り尽くした数少ないシェフの一人です。本州のシカ肉はワイルドな味わいなのに対し、十勝のエゾシカは手つかずの山や綺麗な沢が育む豊かな自然によって育った綺麗な新芽を食べているので、洗練されたすっきりとした味わいが特長だと言います。
しかしエゾシカは流通が少なく牛を上回る高級品である上に、良い肉は取り合い状態でコネが無いと手に入れることすらできません。そのため都市部であっても提供できるレストランは大変希少で、有名料理人が作る高級料理としてごく一部のハイソ層にしか提供できないのが現状なのだそうです。
その裏では、狩猟に必要不可欠な土地勘や経験による勘をもつベテランが高齢化などにより引退、若手が育たずハンター自体も減少、経験が少ないハンターは山に入っても獲れない、シカ肉を加工できる工房がそもそも少ない、など様々な理由で命を無駄にしていると言います。
その現実を受け、獲った命は無駄にせず感謝して「いただく」、一般的な食肉として流通できるシステムを作るための第一歩としてドローンでハンターの負担を減らして食に繋げる、三浦社長の挑戦が始まりました。
日本に生息するニホンジカの中で、北海道にのみ生息する亜種を「エゾシカ」といいます。
可愛らしい姿で害獣とは無関係に見えるシカですが、食害を受けた農地全体の50%以上がシカ被害と言われており、農業への被害は甚大です。
またシカに樹皮を食べられた木は枯れ、若い芽を好んで食べるので森が育たずに衰退、林業や森の生態系にも深刻な被害を及ぼしてます。日本にはシカの天敵がいないため、個体数は今なお増え続けています。そのため、増えすぎた個体はハンターにより適正な数に調整する必要があります。残酷なようにも思えますが、狩猟は人と野生鳥獣と共存していくために必要不可欠なことなのです。
シカは野生動物なので環境や気候に合わせて山中を移動しています。
シカの姿を捉えるという事がまず容易ではなく、土地勘と経験に基づく勘が必要です。
そしてシカの姿を捉えたとしても、仕留める事がまた至難の業。100発100中のベテランハンターも居れば、獲れない人は全く獲れないという特殊な職業です。
このベテランの勘というのは教えることが難しく、たとえ何年かかっても身につかない人もいれば、数回山に入っただけで勘を捉える人もいます。
山中では熊と遭遇する危険も伴うため、闇雲に歩き回る事は体力を奪い事故や命の危険に繋がりかねません。
安全かつスピーディーにハンティングしてくる事が大切なのですが、確実に仕留めて戻るハンターはごく一部のベテランハンターで、全てはハンターの腕次第というのが現実なのです。
ベテランと若手の「勘」や「腕」の差を埋め事ができる画期的な狩猟スタイルとして今注目されているのが、赤外線カメラ搭載のドローンを利用したハンティングです。
上空から赤外線カメラが生きもの感知し、ズームで寄せれば形で動物の種類を判別する事が出来ます。
今まで「勘」で捉えていたものが、ドローンを使う事で事前に居場所を特定し、最短ルートで近づく事が可能になりました。
狩猟成功率20%のグループも発見率は100%になり、後は腕次第という所まで引き上げることができています。
ドローンハンティングが画期的と言われる最大の理由は、山中を歩き回る事なく安全かつ正確に、最短ルートでシカにたどり着くことが出来る事です。
体力的な問題で狩猟にでられない高齢のベテランハンターも活躍する事ができるようになり、人手不足の解消や若手の育成にも繋がります。
また、仕留めたシカは鮮度を保つためにその場で血抜きをし、解体して持ち帰る必要があります。
山中を歩き回った後の解体作業は体力的に厳しく、熊との遭遇など命の危険と隣り合わせのリスクがあるため、クオリティよりスピードが求められてきました。
しかし、この解体が鮮度や味を左右する要であり、「本当は料理人が同行して解体をするのがベスト」とも言われています。美味しいお肉でなければ市場に定着しません。
ジビエ料理は美味しいという事を知ってもらうためには、ドローンでハンターを危険から守り、丁寧に解体した美味しいシカ肉を提供する事が流通を広げる近道だと考えます。
シカ肉の流通を広げるための道のりは長く、課題は山積みだと言います。まず、シカは野生のものなのでどんな病原菌、寄生虫をもっているか分かりません。
様々なチェックをする食肉加工の工房を通さないと流通することが許可されていないのですが、工房自体が少ないという問題があります。
工房を開業するためには、食肉加工の資格などの取得や様々な申請が簡単ではない事と、流通経路が整っていないので経営的に見通しが立てづらい事などが参入人口が少ない理由と考えられます。
問題を解決するには、ドローンで狩猟確率を上げて安定的にシカ肉が獲れるよう支援し、若手ハンターが育ちやすい環境を整える事が必要です。
安定的にまとまった量のシカ肉が提供できるようになれば流通経路も広がり、食肉加工ビジネスに参入したい人が増えるのではないかと考えています。
仕留めたシカは人力で持ち帰ります。大きい個体だと足だけでも40Kg近くあるシカを、険しい山中を移動しながら担いで持ち帰らなければなりません。
重量物を運ぶためには人手が必要ですが、4、5人で組んで山には入れるグループは希で、1人、2人で入っているのが現状です。
その場合、持ち帰れる量は少なく、持ち帰れないものは熊に掘り起こされないよう深く埋めてからその場を去らなければいけません。
しかしドローンで安全に効率よくハンティングできれば、運ぶだけの人員を連れて行くことも可能になります。
また、今はまだ日本の航空事情と法律の問題で課題はありますが、「ドローンで運ぶ」未来も実現可能で、三浦商店では実際に重量物を運搬できるドローンを所持しているそうです。
例え1人で入っても、ドローンに乗せてそのまま工房まで運ぶことができればハンターから運ぶ労働がなくなり、狩猟だけに専念してもらうことができます。
これが実現すれば、今まで数倍の肉を運ぶ事が可能になり、流通は安定します。
三浦商店の目指す「ドローンハンティングを食に繋げたい」、未来はすぐそばまで見えてきています。
この度のワーケーションステイでは、三浦商店のドローンハンティングに同行し、赤外線センサーがシカを捉える場面などを体験していただくことになると思います。
その後カルムへ移動し、当日のシカではありませんがシカ肉のジビエ料理を食べていただきます。
杉本シェフがシカ肉を調理する際、何度で何分と計りながら、しっかりと火を入れていき、技術的に調理しているそうです。
感覚的に調理したほうが美味しいそうですが安全にジビエ料理を楽しんでいただくために必要不可欠な調理法。しかしそんなハンディを乗り越え杉本シェフのジビエ料理は「本当に美味しい」のだそうです。
日本全国を見てもエゾシカを食べれるお店は希少な上、十勝で獲ったシカ肉を十勝で食べられるという体験は貴重で衝撃的な出会いになるのではないかと思います。
芽室はとにかく人が優しくて温かい所です。移住者に対しても自然に開かれていて、構われることが嫌いな人でもそのうち溶け込んでしまっているような、ちょっと特殊な地域です。
仕事はしやすいし、ご飯が美味しい、こんな事がやりたいと発信すれば地元の人を紹介してくれるし、助けてくれるし、付き合ってくれる、自然に仲間になってくれるのが芽室の人たちです。
移住先として検討しているのであれば住んで損はなしですし、最近はリモートワークを主としている方が多く移住してきています。芽室に来て芽室の人と関わり、温かさを感じていただけたら嬉しいです。